研究概要 |
高普及化時代の水道システムは老朽化しているものもあり適切な維持管理を行っておくことが重要である.また事業の効率化を進め,事業内容の情報開示を進めることも求められている.建設を中心に進めてきた水道事業に置いて,効率的な維持管理を進めるための技術は必ずしも十分とは言えない.そこで水道システムの維持管理を効率的に行うために信頼性工学の手法を適用するための検討を行った. 水道システムを,構成要素の直列,並列システムで表記し,システム全体の信頼度を検討した.取水施設,浄水施設においてこの手法の適応を試みた.このような検討が行えるように,水道施設を構成する設備の修理記録より,故障時間間隔に関する資料を整理した. プラントの安全性の検討によく利用されるFTA(Fault Tree Analysis)を用いて,水道の地震対策を検討することを試みた.地震に対しては広範な対策が考えられるが,それぞれの費用や確実性を整理した.つづいて応急給水不能と応急復旧不能をそれぞれトップ事象とするFT図を展開し,各水道事業体の事情に応じてどのような対策が適切であるかを検討する手法を示した. 配水管からの漏水をいかに削減するかは,水道事業経営上重要な問題である.給水区域を定期的に巡回する漏水防止作業を,システムの点検取替問題として解析する手法をもとにモデル化し,最適な漏水調査の間隔を決定する手法を提案した. 事業体内の給水区域の信頼度を相対的に評価するために,個々の構成要素の信頼度を統合化するためにAHP(Analytical Hierarchy Process)を用いた検討方法を提案し,地震被災時の信頼性の検討を行った. 以上,本研究では,信頼性の考え方を水道の維持管理に導入するための基礎的な検討を種々行い,その可能性を示すことができた.
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