冨栄養化現象において、水利用に最も重大な影響を与えるのは植物プランクトンの増殖である。それ故、植物プランクトンの増殖を抑制することが最も重要である。水域における藻類と流動との関係については、植物プランクトンの集積に関する研究を除けば、流動が考慮されることはなかったが、流速の大きな河道区間で植物プランクトンが増殖しないことは経験的に知られている。本研究では、流動の藻類増殖に及ぼす影響を明らかにし、この効果を水質浄化に応用することを目的としている。 本年度は、昨年度に整備した実験装置を用いて室内実験を行うと共に、昨年度に明らかとなった室内実験と現地観測との乖離の原因を明らかにするために現地観測を行った。最初に、現地観測では、流速の変化の小さい河道区間を選び、そこでのクロロフィルaの変化、水温、栄養塩濃度、日射量を観測した。クロロフィルaは増加する場合と減少する場合とがあり、流速10cm/s未満の水域では増加が生じ、流速20cm/s以上の区間では減少していた。なお、残念ながら10-20cm/sで流速が一定しているような河道区間は存在していなっかった。なお、植物プランクトンの増加、減少に、水温、栄養塩濃度及び水中の光量子量が影響しているとは考えられなかった。特に、流速により水中の光量子量が変化するかを検討したが、現在の段階では明確な差異が検出されていない。また、室内実験より、流速の藻類増殖に対する影響は、植物プランクトンの密度が高いと現れないという結果が得られている。現在、これらの結果を投稿中である。
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