研究概要 |
本研究では,汚染物質の輸送を促進する可能性のあるコロイド粒子の降雨時における挙動に影響を与える様々な要因(雨水の化学的組成,降雨強度,土の種類,macroporeの有無と位置,撹乱土壌と不撹乱土壌の違い,土層圧,降雨間隔)について土壌カラム実験により検討した.また吸着実験により土壌粒径フラクションに対する農薬(シマジン)の吸着・脱離を調べた.さらに吸着実験とカラム実験の結果からコロイドによるリンの流出量予測を行い,ライシメータを用いた人工降雨実験により,リンの流出とコロイド粒子の関係について調べた.得られた結果を以下に示す. (1)種々の要因の中で,雨水の化学的組成,土の種類,土層厚が土壌内におけるコロイド粒子の挙動に最も大きな影響を与えることが明らかになった. (2)撹乱土壌と不撹乱土壌では,1回目の降雨を除くと,大きな差は見られなかった. (3)コロイド粒子の流出量を定量的に評価するための指標として,CMI(Colloid Mobilization Index)を提案し,その有効性が確認された. (4)農薬(シマジン)の吸着はシルト径分画で最も多く,脱離量は最も小さいことがわかった. (5)吸着実験の結果より,シルト部分(1〜10μm),コロイド部分(0.3〜1μm)の両フラクションで土壌全体のリン吸着量の約98%を占めていることが明らかとなり,これらの微粒子はリンの流出に大きな影響を及ぼすと予測される. (6)吸着実験の結果に基づいたリンの流出量予測値が,カラム実験による実測値を大きく上回っており,この原因に関してはさらに詳細な検討が必要である. (7)ライシメータを用いた人工降雨実験において,コロイド状リンの流出はコロイドの流出量に依存していることがわかった.また,コロイド状リン濃度は溶存態リン濃度の約12〜24%であり,リンの流出にはコロイドによる輸送が寄与していることが確認された.
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