研究概要 |
近年,汚染物質が土壌コロイド粒子に吸着して輸送されるという新しい移動経路が注目されている.本研究では土壌コロイド粒子による汚染物質の輸送機構を明らかにする目的で,土壌微粒子への汚染物質の吸着特性,土壌からのコロイド粒子の流出特性,土壌構造(撹乱,不撹乱)の影響,汚染物質のコロイド態流出量と溶存態流出量との比較などについて検討した.得られた結果は以下の通りである. (1)ローム土への農薬(simazine)の吸着量はシルト径分画で最も多く,脱離量は最も小さいことがわかった.また,吸着性の強い農薬(glyphosate)とリンの土壌コロイドへの吸着は競合性があり,両者の濃度がそれぞれの吸着量を決定することが明らかとなった. (2)土壌構造(撹乱,不撹乱試料),macroporeの有無,降雨強度,雨水の化学組成などがコロイド粒子の流出に与える影響を明らかにした.また,macroporeを含む土壌層からのコロイド粒子の流出が拡散律速であり,放物型拡散モデルで表されることを示した. (3)macroporeを含む不撹乱土壌からの拡散律速によるコロイド粒子の放出と移動を記述するモデルを提案した.このモデルは土壌母材からの放出を一次反応で表し,付着水中の拡散と間隙内の移流分散による移動のプロセスも含んでいる. (4)ダムサイト緑化のためのライシメータからの降雨によるリンの流出を調べ,全流出量の約20%が土壌コロイド粒子による輸送であることがわかった. (5)疎水性有害物質を運ぶ可能性のある有機性コロイドの流出に与える降雨強度,降雨継続時間,macroporeの有無などの影響を明らかにした.降雨量1500mmで,土壌内の全有機物の約0.2%が有機性コロイド粒子として流出した.全コロイド流出量の約26%が有機性コロイド粒子であることがわかった.
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