研究概要 |
昨年度,塩素とオゾンの単独系で感染力低下能力を評価した。その結果,塩素による感染力の低下には明瞭な塩素濃度依存性があることが明らかになった。そこで,今年度はまず塩素濃度依存性を評価し,20℃,pH7,遊離残留塩素濃度0.5〜100mg/Lにおける濃度依存性を定量的に明らかにした。続いて,オゾン+塩素のシークエンシャル消毒実験を行った。この実験では,精製オーシストをまずオゾンにCT値で0.75,2.0,3.0mg min/L接触させ,チオ硫酸ナトリウムでオゾンを消去し,残留する過剰分のチオ硫酸ナトリウムを遠心洗浄した後,遊離残留塩素に24時間(遊離塩素CT値で約1,400mg min/L)接触させた。「オゾン+塩素」における感染力の低下は,オゾン接触CT値が0.75,2.0,3.0mg min/Lのとき,それぞれ,2.17,1.68,1.43logであった。一方,オゾンと接触させずに塩素にCT値で約1,400mg min/L接触させたときの感染力の低下は1.74logであったので,前段にオゾンに接触させたのちに同量の塩素に接触させる組合せ消毒の塩素接触段階での増加分は前オゾンCT値が0.75,2.0,3.0mg min/Lのときそれぞれ,+0.97log,-0.06log,-0.31logと算出された。このように,前オゾンの接触量が0.75mg min/Lの場合にのみ,約1logの相乗効果が認められたが,オゾンに2.0と3.0mg min/L接触させたのちに塩素に接触させた場合には有意な相乗効果は認められず,オゾンに3.0mg min/L接触させたのち塩素に接触させた場合にはむしろ減少傾向すら認められた。これらの結果から,オゾンに接触させたあと塩素に接触させる組合せ消毒方法には,実質上,オーシストの不活化に十分な相乗効果は期待できないと判断された。
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