研究概要 |
前年度に構築した共に河口堰を有する九州の1級河川である遠賀川,筑後川の人口および土地利用形態に関する地理情報システム(GIS)データベースを利用し,汚濁負荷流出解析の内容を更に深化させた。すなわち前年度は,非特定汚染源からの総括的なCOD,T-N,T-P負荷の算定方法を明らかにしたが,本年は,T-Nの構成成分であるアンモニア性窒素および硝酸性窒素毎に人・水田・森林などの発生源からの流出を推定可能とする手法を検討した。その結果,アンモニア性窒素の発生源は主に人であることが予想された。硝酸性窒素については水田及び森林がその発生源の主要なもので,例えばある水質観測点における硝酸性窒素濃度の水田及び森林由来濃度を推定することが可能となった。これらの検討を上記の遠賀川,筑後川流域について行った。 また,当該年度実施計画には記載してなかったが,河川水中とりわけ上水源の河川での重要な課題となっているいわゆる環境ホルモンの流出解析にも前年度構築したGISデータベースの活用が可能なことが判明したので,緊急にこのテーマに着手した。農薬8種類および環境庁が1998年に示した内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質のうちフタル酸エステル系物質3種類を選定し,遠賀川流域における濃度変動,支川毎の流出負荷量とその消長現象,流出原単位の解析・解明が可能であった。結果の一例としては,遠賀川流域における農薬使用の結果引き起こされる農薬流出の実態とその流下過程における農薬の残留性の違いなど消長現象を把握することができた。また,フタル酸エステル系物質についても同様に,人口を発生源とした流出原単位を把握することができた。
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