研究概要 |
鉄骨構造物の角形鋼管柱を用いた梁端混用接合部において,梁のウェブ接合部分による曲げモーメントの伝達能力は小さい.しかし,梁ウェブ接合部分の柱の面外変形を抑えて接合部全体の接合耐力を大きくすることで梁材の塑性変形能力の向上が期待できる.本年度はこの点に着目し実験的検討を行った.梁ウェブ部分における柱内部を補強した場合について実大実験を行い,補強方法や柱形状の違いによる差を検討することを目的とした.試験体は,柱にH形鋼梁を片側に接合したT字型とした.柱材は,内蔵ダイアフラムを有するプレス成形角形鋼管と貫通ダイアフラムを有するロール形成角形鋼管の2種類を使用し、梁ウェブ部分における補強の方法は、水平方向の補強ダイアグラムを用いたタイプまたは縦スチフナを用いたタイプである.これらと比較のために一般に用いられている無補強タイプのダイアフラムを用いた試験体を計画した.繰り返し載荷実験の結果から,ウェブ接合部を補強することにより梁端混用接合部の力学的性能は向上することが認められた.この向上率は柱の径厚比が大きいほど明瞭である.プレス成形角形鋼管の内蔵ダイアフラムの取り付き方向の強軸,弱軸については補強効果の差は見られなかった.水平方向の補強ダイアフラムでウェブ接合部分を補強するタイプが最も柱の面外変形を抑えることができる.縦スチフナ補強タイプの結果から,縦スチフナは梁ウェブと同一平面内に取り付けなければ補強効果が小さい.補強効果については梁材の性能の影響が大きく梁材の降伏比が小さく,破壊靱性値が小さな梁の場合に特に梁ウェブ取り付き部分の柱の補強は有効であることが判明した.
|