研究概要 |
鉄骨構造物の角形鋼管柱を用いた梁端混用接合部において,梁のウェブ接合部分による曲げモーメントの伝達能力は小さい.しかし,梁ウェブ接合部分の柱の面外変形を抑えて接合部全体の接合耐力を大きくすることで梁材の塑性変形能力の向上が期待できる.この点に着目して本年度は平成11年度の研究を発展させて実験を計画した。梁ウェブ部分における柱内部を補強した場合と無補強の場合を比較することを基本として実大実験を行い,更に柱のウェブ接合部分の補強方法や柱の幅厚比の違いによる差を検討することを目的とした.試験体は,柱にH形鋼梁を片側に接合したT字型とした.梁ウェブ部分における補強の方法は,水平方向の補強ダイアフラムを用いた形式または縦スチフナを用いた形式である.梁端接合部の接合形式として、梁フランジと梁ウェブの両者を溶接接合する形式と梁フランジを溶接接合して梁ウェブを高力ボルト接合する形式の2種類の接合形式を設定した。更に、梁端接合部の破壊現象の重要な要因となる梁の鋼種として2種類を計画した。繰り返し載荷実験の結果から,ウェブ接合部を補強することにより梁端混用接合部の力学的性能は向上することが認められた.この補強効果は柱の径厚比が大きいほど明瞭である.無補強の試験体では梁フランジの破断により最大耐力を示したが、水平方向のダイアフラムおよび縦スチフナによって補強した試験体は梁フランジの破断は生じず、梁の局部座屈で最大耐力を示し、優れた塑性変形能力を発揮した。水平方向の補強ダイアフラムと縦方向のスチフナは両者ともに柱の面外変形を抑えることができる.両者の比較では縦方向のスチフナによる補強形式が水平方向のダイアフラムによる補強に比べてやや補強効果が大きい。補強効果は梁の材料としての性能が低い場合にその効果が大きく、梁ウェブ接合部分の接合効率が小さい場合に特にウェブ取り付き部分の柱の補強は有効であることが判明した.
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