1.現行の設計基準に従って梁曲げ降伏先行の崩壊形となるように設計されたRC骨組について、想定した崩壊形の信頼性(実現確率)を評価した(長田)。材料強度および耐力評価式のばらつきによる梁・柱部材の曲げ・せん断・付着強度の統計的不確定性を定量化し、梁・柱部材の各耐力を確率変数とした骨組解析をモンテカルロ法により行い、個々の部材耐力のばらつきと想定した骨組の崩壊形の実現確率の関係について検討した。その結果、部材のせん断余裕度及び柱梁耐力比を、現行の設計指針で提案されている1.3程度として設計すれば、個々の部材のせん断破壊や柱の曲げ降伏ヒンジの発生を95%程度の確率で防止できる(信頼性指標β=2程度)できることを明らかにした。骨組全体の崩壊形の信頼性は、骨組の層数、スパン数などで決まる部材数に影響され、部材数が多くなるほど信頼性は低下する。ただし、層崩壊機構が生じなければ部分的な柱の曲げ降伏を許容するとすれば、部材数が多くなるほど信頼性はむしろ上昇することなどが明らかとなった。 2.軸方向伸び変形拘束を受ける梁部材の弾塑性挙動を把握するために梁部材の静的載荷実験を行い、部材の解析モデルについて検討した(前田)。部材実験は、軸変形拘束剛性、せん断スパン比を変数として行い、軸変形拘束により生じる付加軸力の挙動を把握し、影響因子について検討した。実験の結果、部材の軸方向伸び変形挙動は、部材を剛体の回転でモデル化することにより簡略的に評価可能であること、部材端部に鉄筋要素とコンクリート要素からなるマルチスプリングバネ(MSバネ)を設置した解析モデルにより、水平荷重-水平変形関係、梁の圧縮軸力の履歴などを適切に評価できることを明らかにした。
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