| 研究概要 |
構造物の耐力は,供用期間中に,鉄筋の腐食・アルカリ骨材反応・鋼材の疲労・木材の腐朽などにより劣化する場合がある。このような耐力劣化は構造物の供用期間が短い場合は無視することができたが,供用期間が長くなるに従い建物の使用性や安全性に大きな影響を与える。建物の耐久性を向上させる技術を開発する一方で,耐久性を考慮に入れた性能評価手法が必要となる。
構造物には,一般に複数の時間的に変動する荷重が加わっており,構造物の信頼性評価にはこれらの荷重の適切なモデル化が極めて重要である。本研究では,まず,荷重の時間変動を考慮した組み合わせ荷重効果の基準期間における最大値の確率分布関数の理論解を提示し,解析例を用いてその精度と適用性について検討を加えた。この理論解は簡潔な形式で,その精度は荷重強さの確率分布や統計量,確率過程の特性に依らず極めて良く,汎用性に富んでおり,耐力劣化の無い構造物の信頼性解析において限界状態超過確率を精算する場合のほか,耐力劣化を等価な耐力低減係数に置き換えて設計する際に,計算コストの高いシミュレーションに代わって適用することができる。
構造耐力が供用期間中に変化しない場合には,供用期間中の荷重組み合わせの最大値のみに対して信頼性を検討すれば良いが,構造耐力が時間とともに変化する場合には,供用期間中に生起するすべての組み合わせ荷重に対して耐力が上回るか否かを検討しなければならず,極めて複雑な問題となる。ここでは,本研究代表者が提案している単一の時間変動荷重に対する耐力劣化する構造物の信頼性解析手法を拡張適用する手法についてシミュレーション結果と比較しながら検討を加え,支配的な荷重以外については,任意時刻の平均値を用いることである程度の精度が得られることを示した。
次年度は,耐力劣化と等価な耐力低減係数の実用化の可能性について検討を加える予定である。
|
