研究概要 |
柱梁接合部パネルの耐力比を変化させた既往の研究を収集し再検討するとともに、接合部パネルの耐力比を変化(R_P=0.86,1.03,1.09)させた通しダイアフラム補剛形式角形鋼管柱梁接合部(柱:□-300_X300_X16,梁:H-400X200X9X16、エンドタブ:鋼製、スカラップ:JASS6推奨型)の載荷実験を行い、以下の知見を得た。 1.既往の文献では柱・梁・パネル各部の正確な変形挙動を把握できる資料が極めて少なく、また接合部パネルの耐力比についてもデータの信憑性に疑問が残るものが多く、系統的な実験資料の蓄積が必要である。 2.載荷実験により柱・梁・パネル各部の変形・歪挙動を把握した。結果は以下の様に要約できる。 1)R_P=0.86の試験体はパネルのせん断変形が卓越し、スカラップ底、梁フランジ端には亀裂が観察されたが破壊には至らなかった。R_P≧1.0の試験体はいずれもスカラップ底の亀裂に起因して梁フランジが破断した。 2)R_P≧1.0の試験体でも荷重の上昇に伴い、接合部パネルの塑性化が生じ、骨組は十分な変形能力を有している。 3)梁が破断した試験体でも梁の変形能力は大きい。これは、本実験で用いた鋼材のシャルピー吸収エネルギーが高いことに起因している。しかし、実験では_P=1.03の試験体は早期にスカラップ底に亀裂が生じていることより破壊靭性の低い鋼材が使用された場合は早期に梁が脆性破断する可能性があり、予想した傾向が実験的に明かになった。 3.本年度の実験を踏まえて、次年度では、R_P=0.9,0.95,1.0を目標とし、破壊靭性の低い鋼材を使用した試験体の実験をする必要がある。
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