研究概要 |
接合部パネルの全塑性耐力と梁の全塑性耐力の比(パネル梁耐力比)が1に近い場合について,以下に示す接合部の十字形試験体の逆対称載荷実験と弾塑性有限要素法による数値解析を行い,接合部パネルのせん断変形が梁の曲げ挙動に与える影響を調べた。 1.通しダイアフラム形式角形鋼管柱接合部(パネル梁耐力比=0.86,1.03,1.09) 2.内ダイアフラム形式角形鋼管柱接合部(パネル梁耐力比=0.85,0.95,1.05,1.70) 3.H形断面柱接合部(パネル梁耐力比=0.85,0.95,1.05) 得られた結果は以下のとおりである。 1.接合部パネルのせん断変形により梁端部には局所的な2次曲げ応力が生じ,梁端の歪集中点(スカラップ底,梁フランジ端部)の歪を増加させる。この影響はパネル梁耐力比が小さいほど大きい。 2.梁フランジの鋼材の靭性が十分に高ければ,2次的な曲げによる歪の増大があっても早期の脆性破壊は生じ難いので,パネル梁耐力比が小さい方が接合部パネルの塑性化が進行する結果,骨組としての塑性変形能力は大きくなる。 3.フランジの鋼材の靭性が低い場合では,パネル梁耐力比が0.85でも梁フランジの破壊が生じた。本実験では,破壊形式が延性的か脆性的かはパネル梁耐力比よりも実験温度に依存しており,梁フランジ材の遷移温度が室温レベルであるため,柱断面形状によらず実験温度が低いほど脆性的破壊が生じる傾向が顕著であった。既往の実験で早期の破壊が生じたのも同様の理由によるものと考えられる。 4.以上の実験および数値解析結果を総合すると,パネル梁耐力比が小さいほどパネルの塑性化が進行し,骨組の塑性変形能力は大きくなるが,梁あるいは溶接部の破壊靭性が低い場合は早期の脆性破壊が生じる可能性があるので,パネル梁耐力比が0.85程度でパネル降伏が先行するような場合でも低靭性の鋼材を使用するべきではないことが指摘できる。
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