研究概要 |
鋼構造柱梁接合部パネルの全塑性耐力と梁の全塑性耐力の比(パネル梁耐力比)が1に近い場合について,梁材の衝撃特性値,柱の断面形状およびパネル梁耐力比を実験因子とする十字形試験体の逆対称載荷実験を行うとともに,弾塑性有限要素法による数値解析を行い,接合部パネルのせん断変形が梁の曲げ挙動に与える影響を調べた結果,以下の新たな知見を得た。 1.接合部パネルのせん断変形により梁端部には局所的な2次曲げ応力が生じ,梁端の歪集中点(スカラップ底,梁フランジ端部)の歪を増加させる。この影響はパネル梁耐力比が小さいほど大きい。 2.梁フランジの鋼材の靱生が十分に高ければ,2次的な曲げによる歪の増大があっても早期の脆性破壊は生じ難いので,パネル梁耐力比が小さい方が接合部パネルの塑性化が進行する結果,骨組としての塑性変形能力は大きくなる。 3.フランジの鋼材の靭性が低い場合では,パネル梁耐力比が0.85でも梁フランジの破壊が生じた。本実験では,破壊形式が延性的か脆性的かはパネル梁耐力比よりも実験温度に依存しており,梁フランジ材の遷移温度が室温レベルであるため,柱断面形状によらず実験温度が低いほど脆性的破壊が生じる傾向が顕著であった。既往の実験で早期の破壊が生じたのも同様の理由によるものと考えられる。 以上の実験および数値解析結果を総合すると,パネル梁耐力比が小さいほどパネルの塑性化が進行し,骨組の塑性変形能力は大きくなるが,梁あるいは溶接部の破壊靭性が低い場合は早期の脆性破壊が生じる可能性があるので,パネル梁耐力比が0.85程度でパネル降伏が先行するような場合でも低靭性の鋼材を使用することを避けたり,あるいは,延性亀裂の発生を防ぐため溶接部詳細を改善することが必要である。
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