研究概要 |
最近の電力事情を背景に,発電所の燃料として石炭の利用が近年急速に増大しており,その廃棄物として生産される石炭灰は数年後には1,000万トンを超えると予測されている。地球環境の保護保全が問題視されている今日,その有効利用の拡大を計ることは緊急かつ重要な課題である。石炭灰をコンクリートに混入し建築構造材料として使用することができれば大量の消費が見込めることから,近年,石炭灰を使用したコンクリートの強度や耐久性等の材料特性に関する研究が進められている。 本研究では,石炭灰を多量に使用したコンクリートの建築構造分野への実用化を目指して,その素材特性および鉄筋コンクリート部材の構造特性について基礎的資料を得るために各種の素材試験や構造実験を実施する。本年度はまず,素材特性を把握するために,石炭灰の混入方法を変数としてコンクリートテストピースの素材試験および実大無筋コンクリート柱の静的載荷実験を実施した。その結果の比較検討から,石炭灰を混入すると普通コンクリートに比べ強度発現が遅れる場合があるが,硬化後の力学的特性には大きな差異はないといった既往の研究による知見を確認できた。さらに寸法効果の影響などに関して実験結果を詳細に検討中である。また,付着特性を検討するために引抜付着試験を実施し,現在その結果の整理・検討中である。さらに,石炭灰を多量に使用した鉄筋コンクリート部材の構造特性を検討するために、準実大梁および柱の静的正負交番載荷実験を実施中であり,これまでの結果から梁,柱ともに石炭灰を混入した場合も普通コンクリートとほぼ同等の性能を示すことを確認した。なお,せん断特性を把握するために鉄筋コンクリート柱を対象とした実験の計画も併せて進めている。 結果は随時,関連雑誌等に論文として発表する予定である。
|