研究概要 |
環境保全のために有効利用拡大が求められている石炭灰を多量に混入したコンクリートを建築物の構造材料として実用化するための技術開発を目指し,その素材特性および構造部材の力学的特性を評価・検証することを目的に以下の実験研究を実施した。いずれも石炭灰の混入方法を実験変数として,コンクリートの設計基準強度は近年の高強度化に鑑み36N/mm^2である。実験結果から石炭灰を混入したコンクリートが普通コンクリートと同等かそれ以上の性能を持つことを検証し,建築構造材料としての有用性を確認し,石炭灰の建築分野への実用化へ向けた基礎的技術資料を提示した。 1.コンクリート素材特性に関する実験研究;コンクリート試験片(直径10cm,高さ20cmの円柱)の圧縮試験と割裂試験を実施し,圧縮,引張強度等の力学的諸性質に関して石炭灰を混入した場合も普通コンクリートと同等の性能を示し,普通コンクリートに対する既往の評価式を適用できることを確認した。また,実大無筋コンクリート柱(断面80cm角,長さ160cm)の圧縮載荷実験を行い,強度-変形関係および寸法効果に関して石炭灰の混入による性能劣化が無いことを検証した。 2.コンクリートと鉄筋の付着特性に関する実験研究;異形鉄筋D16,D19,D25の3種を対象に建材試験センター提案の標準引抜付着試験法に準じて試験を実施した。いずれの鉄筋種においても石炭灰を混入した場合は普通コンクリートと同等かそれ以上の付着特性を確認した。 3.鉄筋コンクリート柱のせん断破壊に関する実験研究;一定軸力を加えた鉄筋コンクリート柱(断面20cm角,高さ40cm)に水平力を載荷してせん断破壊実験を実施した。その結果,せん断耐力に関して石炭灰を混入した場合も普通コンクリートに対する既往の評価式が適用できることを検証し,変形能に関しては普通コンクリートと同等以上の性能がある可能性を示した。
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