高齢化社会に進行に伴う、住宅のバリアフリー化や様々なライフスタイルの変化に対応できる木造住宅の実現を目指し、国産の小径スギ材を組み合わせた木製合成梁の開発とその基本的な強度性能を把握する研究を行った。 木製合成梁に長期にわたって鉛直荷重が作用する際のクリープ挙動を把握するため、梁形式(ボックス梁・トラス梁)、弦材の継手の有無をパラメータに長期載荷実験を実施した。一昨年の載荷開始から1年3ヶ月が経過し、これまでの実験データから以下のようなことが明らかとなった。 1.ボックス梁とトラス梁を比較すると、ボックス梁のほうが相対クリープでトラス梁の約1/2の値を示し、高いクリープ性能を示した。 2.トラス梁では、各部材の変形により、梁全体が面外に変形をする傾向が見られたが、ボックス梁では見られなかった。 3.上下弦材の継手のクリープ変形が梁全体のクリープ挙動に与える影響について分析した結果、トラス梁のほうが影響が大きいことが明らかになった。これは、トラス梁がボックス梁にくらべて多くの部材から構成され、多くの接合部をもつことと、ボックス梁が品質管理された構造用合板を多く使用していることの影響ではないかと考えている。 4.木製合成梁のクリープ挙動は、夏季に急激に変形を進行し、冬季には変形が停滞もしくは回復する傾向が見られ、季節変動に大きく影響を受けることが明らかとなった。このことから、相対湿度の変化量とクリープ変形の変化量の関係について分析した結果、負の相関が得られた。また、温度の変化量とクリープ変形の変化量との関係では、すべての試験体で正の相関が得られた。 今後もさらに計測を継続し、木製合成梁のクリープ変形収束の有無や時期の確認、これまでに得られた温度変動や湿度変動との相関を考慮した合成梁のクリープ変形予測式などの検討を行う予定である。
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