昨年度は正方形断面建物2棟間の相互干渉について網羅的に実験を行い、得られた風力の統計量およびスペクトル解析結果を基に風力発生機構の種類を大別したところ、2棟の配置によっては交番渦の影響が全く見られない場合や、風方向風力に現れる場合などの特徴的な棟配置の存在することが判った。本年度はこうした特徴的な棟配置を重点的対象として、風力発生機構を特定するためにローターを用いた詳細な検討を行った。また、ローターによる強制的な流れ場制御の実験を補完するために、当初の予定を変更して異なる大きさの正方形断面建物2棟間の相互干渉についても網羅的に実験を行った。なお、本年度はより網羅的な結果を得るために、試験装置に改良を加えて隣棟間隔の実験範囲を昨年度より拡大した。隣棟間隔は風方向について-4B〜9B、また風直角方向については0B〜7Bの範囲で可変とし、昨年度の5倍以上にあたる合計89の配置パターンについて計測を行った。これらの風洞実験を通して以下の知見を得た。 1.風下側建物の存在により風上側建物の風方向平均風力や風直角方向変動風力は低減される場合がある。ただし、風方向変動風力に関して低減する配置は確認されなかった。 2.風下側建物が風上側建物の直後に配置された場合、風上側建物から発生する交番渦の影響のまったく見られない配置がある。ローターによる強制的な流れ場制御を行っても現象に変化は見られず、2棟が空力的に一体となっていることが確認された。 3.風下側建物が風上側建物の斜め後方に配置された場合、交番渦による風力が風直角方向のみならず風方向にも見られる配置が存在する。こうした領域ではローターにより風下側建物の風力を制御することが可能であり、風上側建物から剥離したせん断層との干渉が風力発生機構となっていたことが確認された。
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