大地震でも主架構の損傷が防止できる形式としてスロット孔からなる応力制限機構を有するハンチ付梁ブラケット部の設計資料を提示するため、本研究では、次の各課題について検証した。 1)高耐力高力ボルト摩擦接合部の力学特性 スロット孔を外板に設けることにより高力ボルト摩擦接合部の高すべり耐力化を計ったものである。動的繰返し実験により、板座金・高強度鋼板(みがき平鋼)を用いた外スロット孔を有する高力ボルト摩擦接合部に対して、繰返しによるすべり荷重の低下が少なく、ボルト軸歪の変動も小さい、安定した剛塑性型の履歴性状を得ている。また、摩擦面を増やす応力伝達機構を導入することで高力ボルト接合の高耐力化を計った新たな接合形式を提案し、新形式は従来形式のすべり係数に比べ大きいことを実証している。一方、スロット孔を有する高力ボルト摩擦接合部の疲労特性も調べている。長スロット孔では著しく疲労強度が低くなり、有効板の疲労特性と変わりないことを明らかにしている。 2)鉄骨梁ハンチの加工方法と品質 梁ブラケット部におけるハンチ形状寸法および圧延H形鋼を用いたハンチの製作方法の現状と問題点を、実施例の調査と圧延H形鋼を用いた実大ハンチの製作を通して調べ、現有設備を踏まえた加工方法・溶接方法とその品質を明らかにしている。 3)ハンチ付鉄骨梁の力学特性 圧延H形鋼より製作される鉄骨ハンチ梁の溶接品質(三角形鋼板とのI形溶接の品質)と縦スチフナの有無がハンチ付梁の力学特性に及ぼす影響を単調加力実験により検討し、ハンチ開始部の上フランジの横座屈により耐力低下が生じてハンチ付梁の変形能力は等断面梁にくらべ低下することを得ている。また、ハンチ付圧延H形鋼梁の漸増交番繰返し加力実験により、ハンチ開始部に何らかの補強がなされていれば変形性能は等断面梁と同程度にできることを明らかにしている。
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