平成11年度に行った鉄筋コンクリート造柱の実験結果に基づいて、柱曲げ降伏後のせん断劣化過程における残存軸耐力の評価方法を検討した。ファイバーモデルを用いた曲げ塑性解析による残存軸耐力の予測値は実験結果を過大評価したこと、実験時の観察結果からせん断劣化過程における残存軸耐力の低下過程はせん断による損傷の進展と対応していることを踏まえ、せん断耐力の評価方法であるトラス・アーチ理論を残存軸耐力の評価に援用した。すなわち、帯筋の負担力と主筋の付着力からトラス作用によるコンクリート負担分を求め、これに基づく残存軸耐力の推移を評価したところ、実験値と一定の差が生じ、この差は柱に加えられた定軸力がアーチ作用によって伝達されることを仮定することによって説明できるため、トラスおよびアーチによるコンクリートの圧縮力負担の和をコンクリート有効強度と見なして残存軸耐力を解析した。解析値は実験から得られた残存軸耐力の低下過程を精度よく再現することができた。すなわち、軸耐力劣化はトラス機構の劣化により説明できることが判明した。また、曲げ耐力が同等で、曲げ降伏後の塑性変形能力が異なる柱の残存軸耐力を調べる実験を行った。試験体は曲げ降伏後の付着割裂破壊により耐力低下を生じたが、水平耐力が約50%に低下した時点での残存軸耐力は塑性変形能力と明確な相関が見られず、この破壊モードに対する軸耐力予測が新たな課題として提起された。
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