研究概要 |
本年度は,下記の研究を行った。 1)膨張コンクリート充填鋼管材の圧縮特性に関する研究 水結合材比20%と30%の圧縮実験の結果,以下の知見を得た。(1)水結合材比20〜30%の膨張コンクリートは,同じ膨張材の置換率に対して,ほぼ同程度の膨張能力が得られ,膨張材の置換率を55%以上にすれば,膨張能力の極めて高いコンクリートが得られる。(2)平鋼を挿入しない場合の,鋼管降伏時のコンクリート膨張圧の評価式を提示した。(3)鋼管内コンクリートの軸方向初期剛性は,水結合材比20〜30%では,膨張材を含まない拘束のないコンクリートのヤング係数とほぼ同じである。(4)鋼管内コンクリートの軸方向初期剛性及びその剛性低下は,水結合材比20〜30%の範囲では,膨張材の置換率に関係なく,膨張材を含まない拘束のないコンクリートの圧縮特性に依存する。 上記の考察結果をもとに,本鋼管材の鋼管とコンクリートの簡便で単純な圧縮特性モデルを提案するとともに,本鋼管材を制振ブレース架構のブレース材として用いるとき,制振ブレース部材が座屈を起こさず,かつ,ブレース材外端部の平鋼の降伏によって,ブレース材の圧縮耐力が決まるように設計するための設計条件と設計用耐力式を提示した。 2)平鋼を挿入した膨張コンクリート充填鋼管材の引張特性に関する研究 水結合材比20%と30%の平鋼を挿入した膨張コンクリート充填鋼管材の繰り返し引張加力実験の結果から,以下の知見を得た。(1)鋼管内コンクリートの引張時の初期剛性は,圧縮時と同様に,水結合材比20〜30%の範囲では,初期の膨張圧や,膨張材の置換率にあまり関係なく,膨張材を含まない,横拘束のないコンクリートのヤング係数とほぼ同じである。(2)本鋼管材を制振ブレース架構のブレース部材へ適用する際に,ブレース材の復元力特性のモデルを構築する目的で,鋼管とコンクリートの引張時の力学特性モデルとして,簡便で,単純なモデルを提案したが,それを用いて,膨張コンクリート充填鋼管材の引張荷重-歪曲線を計算したところ,実験値を比較的良い精度で,予測することが出来た。(3)制振ブレース材の引張時の設計条件を,拘束鋼管がその一軸引張降伏強度に達すると同時にブレース材外端部の平鋼が降伏するように断面を設計するとして,その設計用引張耐力式と設計条件式を提示した。
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