研究概要 |
建築物内部における火災時の竪穴での煙流動に関する基礎的な知見を得るために,傾斜角を自由に設定できる廊下状の模型を作成し,天井面が傾斜した空間を上昇する気流の性状を把握した。その結果,勾配45°付近までは角度の増加とともに伝播速度は増加するが,それ以上では角度による伝播速度の違いがなくなること,また角度が急になると対向流の影響が顕著となることを見いだした。また,密度流モデルによる傾斜路天井面での煙流動モデルを構築し,模型実験で得られたデータと比較した結果,勾配45°以下では密度流モデルにより良い精度での予測が可能であることを示した。 火災時の煙制御に関する問題は,最近の建築物の高層化,大規模な複合化などにより,その重要性がますます増加しているにもかかわらず,大規模化した建築物全体系としての煙流動及び煙制御に関しての研究は十分とはいえない。本研究では,万一の盛期火災時においても消防救助活動の安全な拠点確保の立場から給気加圧システムを有効に機能させるための給気量簡易算定法の確立を目指し,建物全体の通気特性の取り扱いの簡略化手法,遮煙に影響する部分の簡易な温度予測手法,竪穴部分の煙突効果および外気風の影響を簡易に取り扱う手法を構築した。また,煙流動予測計算法を転用した精細計算法も合わせて構築した。簡易計算法と精算計算法による結果を比較した結果,本研究で構築した簡易計算法が妥当であり,設計法として有効であることを示した。
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