本研究では、通風によって得られる「涼しさ」や昼光照明によって得られる「ほどよい明るさ」は、環境の物理要素がどのような変動をするときに得られるのかを被験者実験によって明らかにするとともに、人体エクセルギー収支と温冷感との対応関係を明らかにして、自然共生建築を計画するための基礎的な知見を得ることができた。以下に明らかになった内容を要約して示す。 ●設定温度25℃の冷房室では、空気温の変動が大きいにもかかわらず、温冷感申告の経時変化がほとんどなく、冷房室における温冷感の特徴は定常的で画一的であるのに対して、通風室では「汗をふく」などの行動が見られ、被験者の暑さへの対処方法は多様である。 ●「涼しさ」が得られるときの気流の振幅は、「涼しさ」が得られないときの2倍以上あり、気流の波形は、急激な上昇に引き続くゆっくりとした下降である。 ●ふだん昼光照明を行なうほとんどの被験者は、昼光照明を行なっている部屋で「ほどよく明るい」を申告し、窓から入ってくる光や屋外の様子から時間を把握していて、昼光照明のみの部屋では、申告した時間と実際の経過時間との差は最も小さい。 ●事務作業程度を行なっている人体が暑くも寒くもないような中立的な環境に置かれている場合、人体エクセルギー消費速度が最小になる。
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