接近流タイプを考慮した高層建物吹き付け空気汚染評価の建物外表面濃度予測モデルを構築した。初年度は、風荷重指針の接近流プロファイルを風洞内に模擬するための手法を検討し、地表面粗度に対応した5タイプの鉛直風速分布を風洞内に再現した。次に風洞内に障害物のない平坦地を想定した風荷重指針の接近流タイプIと中層建築物が主となる市街地を想定したタイプIVの鉛直風速分布を再現し、単独高層建物周りの気流性状と汚染ガスの拡散性状について、以下の知見を得た。 (1)建物がない平坦地上でトレーサーガスを放出し、ガス拡散の流れを模擬した条件では、接近流タイプIの鉛直最大濃度はタイプIVよりも大きく出現した。最大濃度発生高さは、小さな風速勾配のタイプIの場合、ガス放出点とほぼ同じ高さで発生した。 (2)高層建物が設置された場合、タイプIは建物直前域での気流の下降現象が小さく、風の乱れが小さいために建物端部で剥離する流れの迎角はタイプIVよりも大きくなった。その結果、タイプIの建物後流域の面積はタイプIVよりも拡大した。 (3)高層模型後流域にトレーサーガズの排出点が配置される場合、タイプIVでは建物後流域の気流の乱れがタイプIより増大するので、最大濃度はタイプIより増大した。中層建築物が主となる市街地で、局所的な空気汚染が発生する危険性が平坦地よりも大きくなることが判った。 最終年度に建物外表面濃度予測モデルを構築した。モデルは正規型拡散モデルの拡散幅に代えて濃度減衰指数を与え、汚染ガスのプルーム高度を実験式より算定した。その結果、以下の予測精度を得た。 (1)排出ガス源が建物上流側に設置される場合、建物外表面濃度予測モデルは誤差35%で外表面鉛直濃度分布を予測できた。最大濃度発生高さの近似が低いときに濃度予測精度が低下した。 (2)排出ガス源が建物キャビティ域に設置される場合、建物外表面濃度予測モデルは誤差14%で外表面鉛直濃度分布を予測できた。
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