1.実験室における了解度実験 平成11年度に開発した試験用音源を用いて、残響・騒音の条件を変化させて音声了解度の主観評価実験を行い、標準的音声了解度試験用音源の作成のための基礎資料を得た。 (1)発声レートを変化させた音源による実験をおこない、残響音場では発声レートが大きいほど了解度が低下する傾向が、特に高齢者では顕著に現れることが確認できた。しかし、話速変換ソフトによる処理を行った音声の品質に問題があり、定量的な結論を得るには至っていない。来年度も引き続き検討を行う予定である。 (2)キャリアフレーズの有無により了解度試験の結果には有意な差があり、残響の影響を評価する為にはキャリアフレーズが必要であることを確認するものとなった。 (3)キャリアフレーズと試験用単語の間のポーズを3段階に変化させた実験をおこない、ポーズの長さが了解度に影響を与えることを明らかにした。 2.実音場における了解度調査 残響時間や反射音構造が様々な講義室、ホール等における音声了解度の調査をおこなうことが、今年度の研究目標の一つであった。学内の大小さまざまな講義室・ゼミ室やホールにおいてインパルスレスポンスの測定を行い、それから各種物理量を算出するとともに、そのインパルスレスポンスに音声信号を畳み込むことにより「聞き取りにくさ」に関して主観評価実験をおこなった。「聞き取りにくさ」と各種の物理量の相関関係を調べた結果は、これまでに提案された各種の物理量は、STIを含めて何れも「聞き取りにくさ」とあまり高い相関を示さず、新しい物理指標の必要性が明らかとなった。
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