平成12年度に引き続き、平成13年度も実音場の各種物理量と主観評価との関係について調べた。多数の実音場においてダミーヘッドを用いてインパルスレスポンスを収録し、これにアナウンスを畳み込んで主観評価実験をおこなった。主観評価量「聞き取りにくさ」とこれまでに提案されている各種物理量との相関を調べたが、いずれも十分高い相関を持つとは言えず新たな指標の必要性が明らかとなった。諸物理量のうちでも、IEC規格にもなり国際的に広く用いられているSTIについて詳しく検討し、これが音声明瞭度・了解度に対応しない場合があることを理論的に解明し、さらに合成音場における主観評価実験をおこないSTIと了解度の不一致が存在することを平成12年度までに確認した。平成13年度は従来の物理指標に補正を加えることで音声明瞭度・了解度や「聞き取りにくさ」とより高い相関を示す物理指標を見いだすべく検討し、新しい物理指標の提案に向けて資料を蓄積している。 明瞭度・了解度試験方法の開発に関連するものとして、キャリアフレーズの有無による了解度への影響に関して無響室内で音場を合成して実験をおこなった。ノイズ付加音場ではキャリアフレーズの有無による了解度の差は認められないが、残響音場では残響時間が長い場合には大きな差が表れることを示した。また、スピーチレートによる了解度の差も残響時間が長い場合に大きくなることを示した。これらの検討結果を基に、了解度試験用音源の備えるべき特性について考察し、「音声明瞭度・了解度試験用音源」作成の準備を進めた。
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