「土壌を活用した雑排水トレンチ」は、大村湾沿岸地域の排水処理対策として公共下水道の準備期間に建設された。閉鎖性海域の富栄養化を押さえることを目的とした「雑排水トレンチ」への補助事業は、家庭の台所排水のみを対象にして安価で即効性を期待して実施されてきた。この補助事業は1985年から進められ、すでに初期の目的を終え多くのトレンチが廃棄された。しかし、それは公共下水道の区域外で現在も使用されている。我々は、建設後十年経過したトレンチの土壌をサンプリングし、そのリン酸吸収係数の低減状況を調べ、施設の耐用年数を検討した。調査の結果、当初のリン酸吸収係数は1000〜1200程度であったが、10年以上経過する中で500程度に減少した。その耐用年数は5年〜7、8年であることが明らかとなった。 土壌系を活用した排水処理は、佐賀県白石平野の数多く分布した「ユドネ」や、長崎県高来町の「ゼゼダメ」などの伝統的排水処理形式に見ることが出来る。本研究では、こうした「自然浄化機能を活用した伝統的排水処理形式」の事例調査も併せて実施した。
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