手話通訳の行われる会場の光環境調査(調査I)と指文字の可読率を調べる実験(実験I)を行った。 調査I:手話通訳が行われる講演会会場のステージ(手話通訳者立ち位置付近)の水平面照度、鉛直面照度、背景の輝度、反射率、手話者の服の色、反射率等を11会場において測定した。その結果、1会場を除けば概ね手話の見やすさをが損なわれる照明状態の会場はなかった。演台横手話者位置と司会者横手話者位置における照度の違いが大きかった。スライド使用時では手話者位置での照度が低すぎるため、投光方法の検討が必要である。今回の測定は比較的規模が大きく調光設備が整った会場であった。小規模(会議室等)での調査と併せ、会場での実際に手話の見やすさ評価が必要であると考えられる。 実験I:昨年度と同様の実験装置を使って、指文字の可読率を求める実験を行った。被験者(聴覚障害者14名及び健聴者4名)は手話者の行う指文字(口形あり、口形なし)による単語(3〜7文字)を見て(実験条件毎に20問)、その単語を記述する。また、照明条件(1〜256lx5段階)、服の色2種類(青、黄)毎に手話の見やすさを評価(5段階の判断基準表から1つ選択)する。併せて照明条件毎に視力を測定する。実験条件毎に回答の正解率を求め、その平均を指文字の可読率とした。その結果、昨年までの結果と同様に、照度が上がれば、指文字の可読率、見やすさの評価値は高くなった。64lx以上では可読率は横ばいもしくは低下した。また、視力の増加と共に可読率も上昇した。「口形なし」より「口形あり」の方がどの実験条件においても可読率が高くなった。服の色の違いは、可読率、見やすさ評価共「黄色の服」より「青色の服」の方が高い値を示した。健聴者と聴覚障害者の指文字の可読率の差は見られなかった。指文字も通常の手話と同程度の光環境が必要であることがわかった。
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