1.「手話通訳付講演会等における手話の見やすさに関するアンケート」と題して、全国47都道府県すべてに支部を持っ全国手話通訳問題研究会の各支部の担当者を対象とした調査を行った。手話通訳付講演会等で重要視されると思われる「手話通訳者の立つ位置」・「舞台照明・音響、聴覚障害者の座席位置」・「手話通訳者の服の色」・「手話通訳者の交代、背景の色」・「手話通訳者の容姿」の5つを主な内容のテーマとし、各支部の手話通訳代表者に支部の統一見解として答えて頂いた。その結果、手話通訳者から、手話通訳の重要性の認識と手話を見やすくするための室内視環境の指針の確立が求められていることがわかった。特に、AV機器を使用した時の照明をどのようにするか困っている支部が多いのが目立った。 2.手話者の胸の位置での鉛直面照度を6条件、背景は暗幕と映写用スクリーンの2条件、手話者までの距離が異なる座席4条件、その組み合わせ48条件で、聴覚障害者を被験者にして、手話の見やすさ評価実験を行った。その結果、いずれの照度においても、後部座席に行く(手話者と被験者の視距離が長くなる)ほど評価値は下がる。同じ座席であっても、鉛直面照度が異なると評価値は異なる手話の見やすさは手話者位置での鉛直面照度が低照度ほど視距離の影響を受けることがわかった。また、鉛直面照度が3331x以上の場合、何れの座席位置(但し、視距離が最大14.1m)でも手話の見やすさ評価は「見やすい」かそれに近い状況であるが、12.31x以下の低い照度では例え視距離が近くても「見やすい」状態にはならないことがわかった。各座席位置での背景(スクリーンと暗幕)による手話の見やすさ評価の違いは、分散分析の結果からも認められなかった。
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