1.手話の見やすさ評価に加え、「手話の可読率」に関する評価実験を行った。その結果、手話者への鉛直面照度以外の条件は同じであれば、手話を読みとる能力である可読率はその時の視力に左右されるのに対し、手話の見やすさの判断は視力よりもその時の明るさに大きく影響されることが分かった。 2.手話の見やすさと手話を見る距離の関係を調べるために、手話者までの距離(視距離)を変えて実験を行い以下の知見を得た。手話の見やすさは、手話者位置での鉛直面照度が低照度ほど手話を見る距離の影響を受ける。手話者の位置での鉛直面照度が100lxを境にそれ以上になると座席位置(視距離)毎に結んだそれぞれの線の勾配はやや緩やかになる傾向があり、視距離が短い程その傾向が大きい。 3.手話の見やすさ評価実験と同様な状態で手話を見る際の視線(注視点)の動きを調べ、以下の知見を得た。手話を見る際に大部分は顔を注視している。また、照度が低い時には顔(口)を注視する割合が多くなるということが分かった。手話の表現の違い(口を使うか使わないか)、手話歴、年齢などが被験者の注視点位置に影響を与えた。ある通訳者の顔(表情)が分かるような照明をする事が重要である。 4.実際に手話通訳付き講演が行われる会場の照明環境の実測調査を実施し、講演会場間の照度差が大きい、映像機器使用時の照度不足が見られ、その照度や投光方法については検討する必要があることが分かった。 5.手話通訳時の手話の見やすさに関わるアンケート調査を全国規模で実施した。手話通訳者から、手話通訳の重要性の認識と手話を見やすくするための室内視環境の指針の確立が求められていることがわかった。特に、AV機器を使用した時の照明をどのようにするか困っている支部が多いのが目立った。
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