本年度(平成11年度〜13年度)において以下の成果が得られた。 (1)集合住宅の連続性と生活空間としての雁木:北海道・青森地域における集合住宅雁木の特性と利用実態について詳細に検討した結果、北国における有効性は高く、今後の展開の可能性も大きいことがわかった。しかし同時に改善すべき点が多いことも明らかになった。(1)現状の雁木は、通路空間として、また子供の遊びや立ち話、散歩など生活空間としてもよく利用されており、居住者の評価は概して高い。(2)冬寒い、雪が吹き込む、床が滑るなど居住者の不満は多く、改善すべき内容は多岐にわたることがわかった。(3)雪の吹き込みを防ぐためには、片面開放型の青森方式が有効である。また一部で行われている屋内化についても有効なことが考察された。(4)雁木の暖房要求は低いが、日当たりのよさを望む声はつよい。南面型雁木の有効性が示唆された。 (2)集会施設の開放性:集会施設については、いつでも気軽に立ち寄れる開放性と常に暖かいという常時暖房の重要性が明らかになった。 (3)住戸近傍のコミュニティスペース:住戸近傍のコミュニティスペースとして集合住宅の廊下は通路機能以外にいろいろなことに使われており、北国特有の屋内近隣生活空間として有効なことが分かった。(1)住戸前スペースは、植木鉢や飾り物など表出空間としてよく利用されている。(2)多様な表出は近隣生活の誘発につながるなどコミュニティの活性化を促すことが明らかになった。(3)住戸前スペースを中間領域として位置付け、個人的な利用を可能にすることは極めて有効なことが示唆された。(4)廊下は、北国では原則として屋内空間であり室温を維持することでさまざまな暮らしが営なまれることが確かめられた。 (4)北国における新しい集合住宅計画論:雁木、廊下、集会施設など北国特有の性格を有する屋内共用空間を適正に位置付け、近隣生活の活性化につながる新しい集合住宅計画理論の体系化が必要である。本研究の実施により我が国北方圏における集合住宅計画の新理論推進におおいに貢献するところがあった。
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