本年度は平成11年度における「居住状況変化モデル」作成の基礎としての「首都圏内の居住地移転構造に関する分析」「出生率を中心とした家族型の変化に与える居住状況の影響力の分析」「既存住宅ストックの活用による居住状況改善効果に関する基礎的な分析」の結果を踏まえて、世帯のライフステージをベースとして居住状況の変化をトレースすることのできるモデルの作成を目指し、世帯のライフステージと居住状況変化の特性から世帯の類型化を行い、対数線形モデルの適用を主な分析手法として世帯類型別の住宅選択行動、居住地選択行動の分析とモデル化を行った。これにより世帯や住宅・居住地の同時選択行動の特性を「住宅型選好」「地域選好」「住宅・地域の対応構造変化」の3つの要因に分解して世帯類型別に把握するとともに各要因の世帯類型・地域による特性の差異を把握した。結果を端的に言えば、1993年までのデータではファミリー期にある世帯は地価や住宅価格の変動に際して、住宅型選好を変化させてもできるだけ現居住地の継続性を確保しようとする傾向が見られた。同時に若年単身世帯等ではこの傾向はやや弱く、今後の居住状況の変化を考える場合には、世帯類型別の視点が欠かせないことが明らかとなった。また、前年度における「既存住宅ストック活用による居住状況改善効果」についての検討を進め、既存住宅ストックの再配分モデルをより詳細な検討が可能なように改良するとともに再配分を進める場合に公的な主体が補助を行うとした場合にどの程度の額が必要となるかを種々のケースについて検討した。この結果、現在と同程度の住宅対策費のもとでも既存ストックの活用により、かなりの居住状況の改善が可能であることが判明した。
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