グループホームは、5〜10人程度の小規模なグループの共同生活の場であるともに、そこではより専門的かつ個別的なケアが求められる場である。この形態は、今後の高齢者ケアのあり方を考えていく上でハード・ソフト両面において多くの可能性を包含していると考えられ、このような痴呆性高齢者のためのグループホームや、グループホーム的な小規模単位のケアを目指してユニット化を実践している特別養護老人ホームを対象として調査・研究を行い、施設における痴呆性高齢者の生活構成を捉えるとともに、ケアシステムや空間構成などの施設環境との関わり方を明らかにすることを目的とする。 本年度も昨年度に引き続き、グループホームのケアシステムと比較する意味で、ユニット化を実践している特別養護老人ホームを対象に入居者の生活調査およびケアシステムの調査を行い、ユニット化した施設の運営の実態とそれが入居者の生活に及ぼす影響について分析を行った。小規模処遇を目指した空間構成をもった3施設の比較を行った結果、入居者にとっての領域ごとの空間の質には大きな差が見られた。これらの施設ではケア方針が異なっており、それは施設のスタッフの配置から入居者の居室の位置の決定にまで絡んでおり、それが空間の制度的環境および結果として形成される社会的環境にまで大きな影響を与えていた。このようなケア環境の違いは入居者の生活に、とくに痴呆度の高い入居者に大きく影響を及ぼし、施設空間内における個と公(施設全体)との関係が大きく異なったものとなっていた。施設空間は一面的な公私の段階に応じてレベル分けできるものではなく、そこには多様な公共性の概念が混在しており、施設の空間構成やケアのあり方、入居者の過ごし方の総体として、公共性の質の違いとして示した。
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