デイサービスなどの通所型と老人ホームなどの入所型の高齢者施設と保育園との複合施設115施設を対象に、空間計画の特性・子供と高齢者の交流状況・運営方法等に関する郵送によるアンケート調査を実施した(回収率43.5%)。また、4施設には直接訪問し、交流の実態記録採集・運営方法の実態と課題等の聴取を行った。 主な分析方法と特徴的な結果は、以下の通りである。 1.複合化の経緯と空間的特性 2.両施設の位置関係のタイプと空間構成の特性(共用空間、視線の相互透過、動線の共有、相互往来)と相互関係 (1)一体型の計画が最も両施設の空間的連携が強いが僅かに1事例のみ。(2)動線の共有は全体の7%と少ない。(3)相互往来は、同一平面で両施設が接する場合が頻度が高い。(3)視線の相互透過は別棟結合型」が最も強く「積層型」では弱い。(4)交流を促すための空間的工夫がなされたのは32%に過ぎない。 3.運営における施設間連携の実態(企画交流の役割分担、設備備品の所有区分、相互自由往来の規定)と評価 (1)両施設間で打ち合わせをし、共同で企画交流を運営する「円滑型」の運営タイプが52%を占める。(2)備品の一部でも共有は33%に過ぎないが「別棟結合型」や「隣接型」に多い。(3)相互の自由往来は、「隣接型」「別棟積層型」の空間タイプや「円滑型」の運営タイプで多く見られ、逆に視線の相互透過がない場合には規制がされやすく、空間が運営方法を規定する状況が見られる。 4.交流のタイプ化と質的評価 (1)「企画交流」と「自主的交流」の何れも行われている施設が80%を占める。(2)「企画交流」のうちの「日課型」では、「月例型」や「年行事型」に比して、保育活動の活性化や高齢者が交流を生きがいに感じるなど、他のタイプにはない有効性があり、交流の質が高いと言える。(3)「日課型」は「自主的交流」の発生の促進が最も顕著で、交流の質を高める上で有効に作用している。
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