高齢者福祉施設と保育園の複合における相互交流を対象に質的・量的分析を行い、活動の活性化・多様化・人間化・異相化などをもたらす創発的交流の状況とそれを生成する空間的・運営的条件について検討し、通所施設、入所施設別に今後の複合化のあり方を提起した。調査は全国に分布する複合施設を対象にしたアンケートと、典型事例に対する個別訪問によるヒアリング及び活動観察記録を実施した。 1.相互交流の創発性 (1)交流は[自主型][企画型:日課型・月例行事型・年行事型]に分類できる。(2)[自主型]は、個人間にパーソナルな関係をもたらす、[企画型]は、活動を活性化・多様化する。(3)「日課型」は、高齢者に生きがいや保育活動に多様件をもたらし、自主的交流の発生の契機となる。(4)「月例型」「年行事型」は、負担の少ない最も一般的な形憩で、入所型施設に有効である。(5)交流はほぼすべての複合施設で実践されている。 2.創発的交流生成の空間条件 (1)高齢者施設と保育園との位置関係から複合タイプは[一体型・隣接型・別棟型・積層型]に分類できる。(2)連接性の低い別棟型や積層型では[企画型]が中心、隣接型では[自主型]も多い。(3)[自主型]の促進には、日常動線の共有、コモンスペースの存在、居場所の開放性、園庭の共有が有効。(4)交流頻度は、複合タイプと運営の方法に規定される。(5)運営上の施設間連携の粗密には複合タイプと入所・通所型が影響する。 3.相互交流と運営方法 (1)特に[自主型]が影響を受ける相互の自山な行き来は、施設間連携の粗密に規定される。(2)[自主型]は、幼児からの働き掛けで成立するため、高齢者に自由な行き来を認めるよりも幼児の場合が有効。
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