本研究で開発した延焼シミュレーションシステムは、従来の延焼速度に基づくモデルとは異なり、建物1棟1棟に着目し、出火、燃焼、伝播、着火過程をモデル化し、さらに、消防力の効果等を考慮し、延焼を時系列にシミュレートするものである。したがって、対象地域の実際の建物配置、施設の特性や、地震による建物の倒壊等の影響及び消火活動による延焼阻止効果を反映することが可能なモデルである。本モデルは、今回の地震による大規模火災の実態にもとづくものであり、出火、燃焼、伝播、着火の各過程において、取り込むべき要因、モデル化の方法、パラメータの調整を検証対象地区の延焼動態とシミュレーション結果を比較しながら構築した。基礎データは、気象関係、建物配置、建物面積、構造等の建物属性、防火施設配置等であるが、ソースデータの様式、媒体が地図、紙のリスト、電子媒体等多様であるため、GISを活用し、基礎データの作成を支援する。さらに、延焼シミュレーションシステムの具体的なアプリケーションシステムとして、汎用的な消防部隊訓練システムも提案した。延焼等の被害予測システムは、袖戸市における災害発生時の丁目単位の状況(全壊、半壊、焼失棟数、延焼危険度等)を基礎データとして、各個別の被害指標に対する予測分析を行う。これらの個別の予測結果より、街区の総合危険度を把握するシステムである。ここでは、老朽家屋の密集地あるいは問題の多い7地区を対象にランダムに100出火点を与え、その延焼状況を統計的に把握し危険度を計算した。
|