1.研究の成果 平成11年度は八女市福島地区における観光活動と町並み保存についての調査分析を行い、町並みを観光資源とした取り組みにおける現状と課題について以下のことが分かった。 (1)伝統家屋の整備は観光資源や生活環境施設としての価値認識から始まったが、伝建調査により文化財としての価値が明らかになると、文化財としての価値も高める修理や、福島の景観特性を理解した修景が行われている。 (2)観光客も伝統家屋の価値を認識しており、しかも地域独自の町並み景観や文化を求めている。文化財としての価値を守る町並み整備は、観光資源としての価値も高めることになる。 (3)貴重な観光資源である水路は未整備であるが、水路整備は住民が最も望んでいることでもあり、生活環境の向上にも繋がる。 (4)町並みボランティアガイドが誕生していることや住民が観光客を歓迎する意向が強いことから分かる様に、町並みを目的に観光客が来ることは、住民の地域文化の再認識と誇りになり町並み保存意識の向上に繋がっている。 (5)福島の特徴である線状に形成された町並みの全てを訪れている観光客は少ない。東西の端に酒蔵が残る造り酒屋があり、これを活用する等の往還道に沿った町並みを歩かせる演出とそれに対応した空間整備が必要である。 (6)町家の魅力である奥行きの深い空間の見学を観光客は望んでいる。それに加え、伝統工芸の知名度が高いにも拘わらず観光客は伝統工芸の製造過程を見学できる機会がない。空き家の活用など町家の居住環境を侵すことなく観光できる施設の整備が必要である。観光客を町並みのどこまで招き入れるか等、生活空間と観光空間を意識した整備が必要になる。
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