1.町並み整備事業の検証 吉井地区では「伝建制度」と「街なみ環境整備事業」により、福島地区では「街なみ環境整備事業」により、それぞれ町並み整備が進められている。現在までに行われてきた事業について、資料収集と現地踏査により把握を行い、伝統家屋やその修理に対する住民の意識の変化や、修理方法について分析を行った。具体的には、(1)修理・修景物件の所在地、補助金額、修理方法、用途等を調査と、写真撮影を行いデータベースを作成。(2)行政や住民へのヒアリングにより伝統家屋に対する意識や、修理方法を分析。(3)以上の結果より、町並みが持つ文化財としての価値、生活環境としての価値、観光資源としての価値の三つの価値を守るためにどのような保存が行われ、それらはお互いにどのような影響を及ぼしているのか分析を行った。吉井については論文としてまとめ、平成12年度都市計画学会学術論文集に発表を行った。その結論として以下のことが揚げられる。(1)当初は観光資源整備としての意識が強かったが、現在では町並みの持つ文化財としての価値を重視しながら町並み整備が進められていることが分かった。それは同時に固有の景観を求める観光客のニーズに応えることになり観光資源の価値も高めている。又それは生活環境としての価値と矛盾する場合が多いが、文化財としての価値が損なわれないように努力がなされている。吉井では利便性や快適性だけを求めるのではなく、少々の不便さを感じながらも地域の誇りとして町並み保存が行われている。(2)町並み保存型の観光地形成を目指している地区では、この三つの価値のどの価値に重点を置くかは異なっても、三つの価値を守りお互いのバランスをはかりながら町並みを維持していくことが、良好な町並み景観を形成しまちづくりを進めていく条件になると考える。
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