1.伝統技術者の現状分析 吉井と福島の町並みの修理修景に関わる大工と左官の伝統技術者について以下の課題がわかった。 (1)現在のところ両地区とも伝統技術者は確保されているが、50代と60代が中心で若い技術者は殆どいない。もっとも問題なのは後継者が不足していることである。自分の代までとあきらめている技術者が多い。 (2)大工より左官の方がその傾向は強い。一般の住宅では塗り壁などの湿式工法が殆どなくなっており、腕を磨く機会がない。 (3)後継者不足の要因としては、(1)徒弟制度が現代の若者には馴染まない。(2)現代の社会では技術者の経済的地位も社会的地位も低い。よって若者にとって魅力ある職業になっていない。また現役の技術者にとっても積極的に若者を勧誘して育てようという意志が湧かない。(3)町家大工及び左官として伝統技術を発揮できる機会がなくなっており、指定文化財の修理を行う宮大工とハウスメーカーの下請け大工とに両極化してきている。 以上のことは、伝統的建造物群保存地区の伝統家屋の修理や修景という伝統技術を発揮できる機会を与えることで解決される要素もあるが、後継者不足を解決する有効な手だてはまだ見つかっていない。町並みに関わる設計士については両地域とも組織を作って、住民の相談にも応じている。 2.広域観光について 両地区と周辺の日田市や柳川市などの町並みが残る地域では、雛祭りのイベントを同時期に開催してそれらを見て回るツアーが企画されている。それぞれの地域で演出や接待に特徴があり、単独で行っていた雛祭りイベントの時より観光客が増加している。しかし、滞在時間が短く町並みの魅力を十分伝えるものになっていない。ツアーの中身について地域ごとの主体的な関わりが検討されている。
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