研究概要 |
本年度は、以下の2つの課題について研究を進めた。 1.痴呆性高齢者専用介護ユニットにおけるケア環境のあり方に関する検討 痴呆性高齢者専用の介護ユニットにおいて、痴呆性高齢者および職員の生活を継続的に観察することで、ケア環境の問題点を明らかにし、痴呆性高齢者ができる限り自立した生活を送るための環境条件のあり方を整理した。個室化により,3ヶ月目あたりより,自立発生的な行為が増え,その行為の質的な変化が出てくることを捉えた。 2.介護施設における痴呆性高齢者に対する環境デザインの効果に関する検討 特別養護老人ホーム、痴呆性高齢者向けグループホーム,老人保健施設など痴呆性高齢者を主な対象とした介護・生活施設において、痴呆性高齢者に対してデザインされた環境の特性を整理しその効果を検討した。 特に色彩の使い方について検討したところ,色彩には治療効果があるとされているが,その色彩の使い方によっては,刺激が強すぎ落ちつかない,他の家具やインテリアにおいて個別的な工夫ができないなどの課題が捉えられた。 色彩の利用による,位置の把握や目印の効果は見られたものの,心理的・精神的効果は必ずしも明確でないことが明らかになった。 一方,小規模な空間は閉そく感があるものの,職員等のケアスタッフの姿が見ることができ,痴呆性高齢者が落ち着く,自発的行為が多く発生する,質の高いケアが可能である,などのメリットが捉えられた。 以上の課題から得られた知見をもとに実際の施設のユニット化,グループホームの設立・計画の提案を行なった。
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