痴呆性高齢者に対してはケアそのものも重要であるが、なじみやすい環境、自分で活動できる環境など生活の自立を支援する物的環境も大事である。 本研究では、痴呆性高齢者にとってどのような空間が望ましいのか、先進的な事例を収集し、利用者の生活を観察することで考察する。 大きくわけて3つの課題をおこなった。 個室化され、小規模なユニットになった特別養護老人ホームにおいて利用者の生活行為を観察した。個室化により拠点ができ、小グループに分けられた生活単位の中で役割を持った生活を送ることで、非常に安定した自立した生活になっていった。その変化は個室化になり3ヶ月めあたりから現れ、次第に同じユニットの利用者とのコミュニケーションも増えていくことが捉えられた。 次に介護施設における痴呆性高齢者に対する環境デザイン効果について事例を収集した。小規模ユニットの効果、個室化の効果は痴呆性高齢者にとって望ましい環境であることを改めて確認できた。また色彩の使い方については事例を収集したが。認知的な効果は認められるが、心理的な効果については十分検討できず、今後の検討課題となった。 最後にまとめとして、実際の計画案に知見を取り込んだ提案を行った。
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