本研究は最終年度であり、試料調査とともに、韓国の建築の技法調査を行った。 (1)韓国の古建築調査 日本の建築の技法と対比的なものに、韓国の古建築がある。この調査研究のために、古建築の図面を調査、収集した。日本における古建築の保存図面と同様の古建築図面システムを作成した。韓国の古建築は中国の建築の影響を強く受けていて、天井を張らない。従って、構造システムが意匠となっているのは周知のことであるが、詳細に古建築を観察すると、構造に必要のない、特殊な装飾化された部材を幾つも発見できた。これは、構造に関わらない意匠表現の部材であり、新たな韓国特有の意匠表現と見なすことができた。この方法を敷衍すると、韓国特有の意匠表現論を組み立てることができると思われる。 (2)醍醐寺の古建築調査 京都の醍醐寺に存在する10棟余りの古建築について、技法的な視点から、詳細な調査を行った。特に上醍醐においては、近世初期の同時に建設された如意輪堂、五大堂、開山堂という3棟の建築が興味を惹かれる。それぞれ和様、禅宗様、大仏様という三つの様式を使い分けていて、極めて意図的な意匠計画があったことが判る。 (3)東京大学所蔵の建築技術書の調査研究 東京大学建築学専攻が所蔵する近世の建築技術書について、利用可能にするために、調査、分類、整理をおこない、一部を検討した。このなかに、豊臣秀吉による方広寺大仏殿を示したものがあり、大仏様を援用していることが明確にわかった。同時に、計画された鐘楼も特殊な形式を持つ東大寺鐘楼を真似ていて、東大寺様とも言うべき建築を計画していたことが明らかになった。過去の形式・様式をどのように意識していたのか、さらに検討する可能性が開けたといえる。 (4)研究のまとめ 過去3年間の調査・研究をまとめ、総合的な検討を加えた。個別の技術的な検討から、組物の細部技法まで、その意味について検討した。
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