平成11年度には可能な限り平安時代の柱間寸法や平面構成に関する記述を網羅的に収集し、母屋・庇といった平面部位に着目しながら整理を行った。12年度では、研究書の考古学・文献史学といった関連分野の研究成果を活用するために、これら諸分野の情報の収集を行うとともに、整理、把握されたデータを時代・利用者・利用目的など社会的・文化的な属性と合わせて多角的に分析・検討した。13年度では、この検討をもとに、柱間寸法や平面構成の解明と、時代による変遷の把握につとめた。 時代的変遷から位置づけられてきた柱間寸法の相違の多くが、むしろ社会層の反映としての住宅の位置づけの相違に起因するとの結論を得て、社会層の相違を考慮して柱間寸法を想定し、その相違を反映した平面を復元、図示し比較した。結果として柱間寸法の設定は、平安時代貴族住宅の実態把握の前提として等閑視できない重要事項である点を改めて確認した。具体例における建築規模の復元案作成への基礎データとして整理した。そこで東三条殿を事例として、既往の主要な復元案について柱間寸法の適否を逐一検討し、復元の基本前提を再確認した。そして従来の復元案は、本研究から明らかになった平面部位の相違による柱間寸法の差異の実態に対して齟齬が大きく問題があることを指摘した。なお、復元研究における課題についても問題点や学問的な限界と可能性を総括的に整理し提言した。
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