京都の旧市街地において特に洋風意匠を内外に持つ近代町家を取り上げ、予備的な悉皆調査により約150棟をリストアップした。これらを個別に訪問し、聞き取り調査、資料調査を行った上で、比較的保存が良好で、近世町家にはない特徴を示す遺構を選び、33棟を選び家屋調査を実施した。 その結果、洋風町家は、家屋構成の特徴から看板型・洋館付設型・洋館連結型・完全洋館型の4種に大別することで、これらの家屋形式の特徴を整理することができた。 すなわち、看板型は外観を縦長で防火・防水仕上げのファサードを一体的な洋風で構成するものの、間取りは、角地や狭小宅地などを除けば、伝統的な京町家の平面を受け継ぎ、室内は、和風の造作を基調とする。洋館付設型は、専用住宅を中心に用いられ、応接間などを和館の主屋前面に張り出させ外観を引き立てる。近代の仕舞屋型町家における洋風摂取の代表的な家屋形式であると位置づけることができた。洋館連結型は、店舗や診察室などを洋館にまとめ、居住部分の和館とを前後あるいは左右に並べて接続する。洋館はRC造とするものも多い。通り庭を持ち表屋造りの平面を踏襲するものも多かった。近世以来の職住を分ける表屋造りの合理的な家屋配置は、洋館を町家建築に導入するに有効な方式として踏襲された。以上のような成果を得た。
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