今年度は、大正から昭和初期にかけて道路幅が拡築された河原町通りを取り上げた。同通りには現在も大正から昭和初期に建てられた洋風町家が数多く残っている。同時に、同通りは東側にある鴨川に沿って走っているために、その形状も南北に直行する烏丸通りや堀川通りなど他の拡幅された通りとは異なり、斜に拡幅された範囲が広いなど特異である。そこで本年は、特に河原町通りの町家を取りあげることにより、大正から昭和初期に建てられた町家形式の特質について、その成立過程を含めて検討した。同時に、河原町通りの拡築の経緯を可能な限り明らかにすることでその町家と敷地への影響について検討した。 調査は、河原町通り沿いの明治から昭和初期までの戸建て町家を対象とした。ただし、外観に関しては庁舎や事務所ビルなども含めた近代建築を対象とした。最終的に62軒のリストアップと、10軒の平面図、その補足として11軒の聞き取りによる間取り図を得た。 その結果、道路拡築により同通りの西側宅地の規模や形状が著しく改編され、町家の家屋形式も建物の表裏が逆転するなど、大きな影響を与えたことを事例に即して明らかにした。さらに同通りは東側を走る鴨川に沿って平行に拡張整備されることにより道が斜めに改設された。そのために、中州状の街区が形成されるなど、他の通りでは見られない、河原町通り特有の景観が生み出された経緯を明らかにした。
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