研究概要 |
木造建築は適切に維持管理されれば、その寿命を世代にわたって長らえることができる。この維持管理のプログラムをもっとも端的に示すのが、各国で修復保存されている伝統的な建築遺産である。この研究で対象とするのは、木を建築の主要な材料として用いている日本、ネパール、カナダ、ノルウェーの伝統的建築で、その修復技法、修復のプロブラムである。これらを相互比較し、その中から共通するもの、独自に進めるものを抽出して、今後の方向を導き出す参考に資するのが、この研究の目的である。 平成11年度では、すでに実施された修復計画から、具体的な保存対策をネパールのカトマンズ盆地,カナダでは西部のアルバータ州の事例に関する資料を整理し、採取した。北米の建築に対する文化条件については、大阪の研究者に聞取りした。特に我国との相違は、建築物を修復する技術ばかりでなく、保存後の位置づけ、さらには有効な利用法において顕著に見られるので、予め、我国の建築遺産の活用についても調査した。その上で、自然条件、特に気温と植生の異なる南と北の保存例を宮城と沖縄で観察した。沖縄の民家の保存状況、首里城の復原に至るまでの経緯は、厳しい自然状況と人為的な災害、そして復原の概念を端的に物語る。総合して日本の例との比較から考察するのは、次年度の対象と併せて進める。
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