これまでに直接担当した保存修復の設計監理、その後の学識経験者としての保存修復に対する指導・助言、近代化遺産および近世民家の調査参加、今年度までの科学研究費補助による保存修復に関する研究など、それら自己の経験に加え、修理工事報告書、その他資料を参考にして、現在の歴史的な建物の活用にともなう保存修復の考え方と方法について、おおよその問題点と課題を整理した。修復された各地の歴史的な建物からできるだけ多くの事例を選択のうえ、実地調査をおこなって分析評価し、あり方、対策を検討した。結果を事例としてまとめるとともに、活用にふさわしい保存修復のあり方の指針案を具体的に示した。 調査対象とした事項は以下のとおりである。 1.事業の体制:事業主、学識経験者の助言、研究者の調査、設計監理者、施工者、伝統技能保持者等 2.当初の計画:基本方針の策定/全体計画/修復程度の判断、解体の範囲/活用方針と計画の検討等 3.解体と調査:解体時におこなうべき調査とその方法/調書の整理と公表など 4.調査結果の分析と修復・活用方針の検討:調査結果に基づく建造物の再評価/復原方針の検討/活用方針の策定/具体的修理方法の検討/構造補強方法の検討/活用にともなう諸施設・設備の検討等 5.実施設計:修理、繕い/復原/構造補強/活用計画と改造/新しい設備類の設置など 6.記録の作成:報告書の刊行/資料の保存/案内書の作成など
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