1.電子線ホログラフィに関する実験は新素材開発施設の日立冷陰極型透過型電子顕微鏡HF-2000を用いて行った。まず、平行入射する電子線に対しプリズム作用を起こさせるためのワイヤーを作製した。すなわち、直径300nm、長さ1cm程度のガラス細線を作り、表面に金をスパッタリングで蒸着することによりワイヤーとし、電子顕微鏡の二つの中間レンズの間に装着した。 2.このワイヤーに数10〜数100ボルトの電圧をかけ、まず基本的なプリズム作用を確認した。次に電子線の平行度を高めることにより、干渉作用が得られるような電子線照射条件を模索した。ほとんどの場合、ワイヤー端からのフレネルフリンジしか観察されなかったが、対物レンズの電流をゼロに近く落とすことによって良好な干渉縞が再現性よく得られることがわかった。 3.粒径1μmのラテックス粒子の周囲の静電場を観察した。得られたホログラム中にはワイヤーからのフレネル縞とバイプリズムによる干渉縞が存在した。しかし、フィルター処理を施すことにより両者の分離は容易であり、再生像、ならびに位相差像(干渉顕微鏡像)を得た。位相差像には電子線の照射によって帯電したラテックス粒子の周囲に存在する電位場が等高線として明瞭に観察された。 4.一方、Fe-Nd-B合金の周囲に存在する磁場の観察も試みた。ホログラムから得られた位相差像は合金の先端から発生する磁力線の分布を示しており、約1μmの先端部から4.1x10^-15Wbの磁束が10本ほど発生していることを確認した。
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