1.プラズマ・ガス凝集法で作成した単分散Co/CoOクラスター集合体の生成条件と磁気的性質を調べた。酸素ガス流量を制御することにより、1nm程度の大きさのCoOが表面に凝集したCo/CoOクラスター集合体を、平均径が6〜13nmの範囲で均一に作ることに成功した。この集合体は強い一軸異方性を有し、さらに緩和時間を詳細に検討したところ、8K以下で、温度に依存しない磁気緩和が観測された。これは巨視的な量子トンネル効果の現れと考えられる。残念ながら、現在の電子顕微鏡には低温ホルダーがついておらず、電子線ホログラフィーにより、クラスター間の磁気的結合の様子を視角化するには至らなかった。 2.また、単分散金属Coクラスターについての構造を電子顕微鏡により観察し、SQUIDで測定した磁気的性質との関連を調べた。その結果、クラスター集合体の保磁力は6〜13nmの間でクラスターの平均粒径に強く依存することが判明した。一方、高分解能電子顕微鏡による結果では、この大きさ程度で、室温で安定なhcp相に積層欠陥が多数入ることが確認され、クラスターサイズの低下とともに出現するfcc相が、反磁区の形成を容易にし、保持力を下げていることが判明した。現在、このような微細なクラスター内の磁区構造をホログラフィーを用いて調べている。 3.さらに、クラスターを作成するチェンバー内に異なった種類の金属ターゲットを対向させて置くことにより、磁性合金クラスターの作成を試み、B2型構造を有する単分散CoAlクラスターの合成に成功した。化学量論的組成よりAlが少ない領域で強磁性の発現を確認し、これまでの結果は論文に投稿中である。さらに現在、磁気的な多粒子系の振る舞いを調べている。
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