1.電子線ホログラフィに関する実験は日立冷陰極型透過型電子顕微鏡HF-2000を用いて行った。まず、平行入射する電子線に対しプリズム作用を起こさせるためのワイヤーを作製し、電子顕微鏡の二つの中間レンズの間に装着した。このワイヤーに数10〜数100ボルトの電圧をかけ、基本的なプリズム作用を確認し、干渉縞が再現性よく得られるレンズ条件を得た。 2.粒径1μmのラテックス粒子の周囲の静電場を観察した。位相差像には電子線の照射によって帯電したラテックス粒子の周囲に存在する電位場が等高線として明瞭に観察された。一方、Fe-Nd-B合金の周囲に存在する磁場の観察も試みた。ホログラムから得られた位相差像は合金の先端から発生する磁力線の分布を示しており、約1μmの先端部から4.1x10^<-15>Wbの磁束が10本ほど発生していることを確認した。 3.プラズマ・ガス凝集法で作成した単分散Co/CoOクラスター集合体の生成条件と磁気的性質を調べた。酸素ガス流量を制御することにより、1nm程度の大きさのCoOが表面に凝集したCo/CoOクラスター集合体を、平均径が6〜13nmの範囲で均一に作ることに成功した。この集合体は強い一軸異方性を有し、また8K以下で、温度に依存しない巨視的な量子トンネル効果の現れと考えられる磁気緩和が観測された。 4.また、単分散金属Coクラスターについての構造を電子顕微鏡により観察し、SQUIDで測定した磁気的性質との関連を調べた。その結果、クラスター集合体の保磁力は6〜13nmの間でクラスターの平均粒径に強く依存することが判明した。一方、高分解能電子顕微鏡による結果では、この大きさ程度で、室温で安定なhcp相に積層欠陥が多数入ることが確認され、クラスターサイズの低下とともに出現するfcc相が、反磁区の形成を容易にし、保持力を下げていることが判明した。
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