研究概要 |
Fe-Niインバー合金は低熱膨張率を持ち多方面への応用が重視されてきているが、インバー異常と呼ばれる磁気的な異常を示すことから、遷移金属合金のバンド強磁性の立場から多くの研究がなされてきた。しかしこの合金には本質的に合金を構成する元素の組成のゆらぎが存在し,インバー特性はこのゆらぎに影響を受けるとされているので,実験結果と理論との直接的な比較は困難である。この対比が可能となるように本研究ではメカニカルアロイングにより作成したインバー合金が通常の合金よりはるかに幅広い組成分布を持つ試料の作成を行った。試料はボールミル法によりFe濃度が35,37at%のFe-Ni合金をメカニカルアロイ粉末を作成し、それぞれを10等分しそれぞれに400-1000℃の温度範囲の中の各温度で熱処理を行い,種々の組成ゆらぎを持たせるように試みた。これらの試料についてX線回折実験を行い、通常のインバー合金と比較した。組成分布が広がるにつれて回折線のピーク強度が減少し、両者がよく対応していることがわかった。室温における飽和磁気モーメントは、組成の広がりとともにいったん減少して行くが、組成の分布がbcc相との境界領域に達するところで増加し始めることがわかった。 メカニカルアロイングにより組成のゆらぎを導入した試料について高速粒子線照射を行ったが、現段階で試料がアクチブなので、その冷却を待って磁化測定を行い、通常のインバー合金の磁性との比較、考察を行う予定である。
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